後で述べますが、自立自営の心を持った人たちが、今まで述べた資本主義の精神を内に秘めた場合、
経営を大きくして近代的な産業経営者になり、取り残された人々がみずから進んで経営内の規律に
服するような近代的な労働者になって行きますが、この両者とも今まで述べたようなピューリタンの心が絶対必要なのです。
こういう状態を学者はエートスと言う言葉を使って説明します。
エートスとは、単なる道徳とかこうしなければいけないと言う規範ではありません。
そういうものが歴史の流れの中で、いつしか人間の血となり肉となってしまった、いわば社会の倫理的雰囲気というものです。
なにかの事柄に出会うと条件反射的にすぐその命じる方向に向かって行動する、いわば社会心理です。
一阿はプロテスタンチズムが或いはピューリタニズムが近代の資本主義を創り上げたと言っているのではありません。
だいいち宗教改革を行った人達が資本主義文化を創りあげようなどと夢にも考えていなかったでしょう。彼らが若し今の世に生きかえったら、われわれはこんなことはまったく思っても見なかった。というに違いありません。
ただ宗教改革後の一時期に歴史の織り成す複雑な織物の横糸として誠に貴重な役割を果たしたことだけは確かです。
(続く)
2010年02月01日
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