【軍艦のうどんやさん2】一阿の言の葉 第20話

松永大尉の本を読むと何時も彼のことを思い出します。「思い出のネービーブルー」のなかにうどんや屋さんのことがこんな風に出て来ます。

「乗員の多い戦艦、航空母艦が母校佐世保に入港すると、うどん屋さんが艦内で出張販売をしていた。夕方上陸員送りの定期便船で艦に来て最終定期で陸に帰り、その間にうどんを販売するしきたりだった。・・いよいようどん屋さんがやってくる日、私はこの目で確かめたいと思った。十八時頃、あるかないかの薄化粧を。、雪のような真白いエプロンに包んで、親娘と思われる二人の女性が甲板事務室に現れた。・・「どうぞ召し上ってください。」と娘さんが一パイのうどんを差し出した。艦の食事はすべて艦長 軍医長 主計長が試食をし、異常が無いのを確かめてから、乗員に食べさせる慣わしだった。

 それに習ったのだろう、うどん屋さんは毎晩、甲板士官に試食のうどんを持って来た。二人が部屋を出てから、わたしは佐々木兵曹と話し合った。「・・・後は艦側の受入体制だ。俺は今夜の甲板整列で、うどんやさんをひやかしたり、不愉快な思いをさせないよう注意をしておきたい。」「甲板士官、良いところに気が着かれました。」「若い乗員がうどんを食べている近くには、用事のない仕官や下士官は近寄らないようにしたいものです。次に私からのお願いですが、甲板士官が命令口調で注意されるよりも、私の思いつきとして私から言わせて頂けませんか。」

「よし甲板整列での注意は、佐々木兵曹おまえがやれ。士官には俺から話をして置く。」 うどんもおいしかったし、二人の真心が乗員に通じたのだろう、結構繁盛している様子だった。榛名は定期修理もそこそこに艦隊に合流したが、修理期間中の訓練の遅れを取り戻そうと、月月火水木金金の猛訓練の仲間入りをした。それでも郵便物が届いた日には、薄暮訓練を早めに切り上げて「酒保開け、酒、レコード許す。」の号令がかかった。其処へ吉田兵曹がやってきて意味ありげに笑いながら「甲板士官今日の飲み代は、おごって頂きます。」と一通の手紙を差出した。差出し人は、佐世保市小島町3、田中みよ子となっている。水茎の跡も麗しい手紙に皆が気を廻すのも道理だが、私には全くの心あたありがなかった。不思議に思いながら、封を開けて見た。

「私はうどん屋の娘です。いくつかの艦を回り、いやみを言われたり、くやしい思いをしたことも有ります。榛名では、一度もそんなことはありませんでした。最初は若い水平さんがのんびりうどんを食べていらっしやると思っていました。そのうちに用事のない士官も下士官も近寄られないことに気がつきました。それもこれも甲板士官のおこころ遣いと思います。お蔭様で毎晩毎晩楽しい愉快な仕事をさせていただきました。女性からの手紙でかえってご迷惑でしょうが、私達親娘としては一言お礼を申し上げずにはおられませんでした。榛名御一同様に再びお目にかかりたくこころからお待ちしております旨、宜しくお伝え下さい。」

私はこの手紙を事務室一同に廻しながら次のように話した「うどん屋さんの手紙は、通りいっぺんの挨拶では無な恐らく本音だろう。艦内に明るい温かい雰囲気を作るのに甲板事務室は一役かった。ドック入り中は怪我や事故がつきものだが、今回は一度もそれがなかった。艦内の明るい雰囲気のお陰だと思う。佐々木兵曹には特に礼を言うぞ。」佐々木兵曹はうつむいて軽く会釈をした。
 
 「あの娘さんのために乾杯。」吉田兵曹の音頭で何度か杯を上げた。 
 
此れが昔の軍隊と国民のつきあいです。軍隊は私達の家族なのです。それをかっての敵国、左翼、共産党、市民と称するリベラル派達がいかに悪者にし、国民から切り離し切り捨て様としているか。本筋からそれた教育をし続けているかが分かります。

2010年07月21日

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