【昭和精神史】一阿の言の葉 第9話

一阿はここで前に述べた昭和精神史の最後のところに出てくる「伊東静雄」の詩を口ずさみます。

夜来の台風にひとりはぐれた白い雲が

気のとほくなるほど澄みに澄んだ 

かぐはしい大気の空を流れてゆく

太陽の燃えかがやく野の景観に

それがおほきく落とす静かな翳は 

・・・・さよなら・・・・さやうなら・・・・

・・・・さよなら・・・・さやうなら・・・・

いちいちそう頷く眼差のやうに

一筋光る街道をよこぎり

あざやかな暗緑の水田の面を移り

ちひさく動く行人をおひこして

しづかにしづかに村落の屋根屋根や

樹上にかげり

・・・・さよなら・・・・さやうなら・・・・

・・・・さよなら・・・・さやうなら・・・・

ずっとこの会釈をつづけながら

やがて優しくわが視野から遠ざかる



伊東静雄(夏の終り) 
  

この詩が発表されたのは昭和21年8月、敗戦より1年目の夏でした。


(続く)

一阿のYouTubeチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@ichia369/videos



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